■幻視■

Q幻視の対応方法について、否定しない方が良いと聞きますが、否定しないというのは具体的にはどのような対応なのか知りたいです。

話を合わせれば良いのでしょうか・・

 

 

A幻視に対しては頭から否定するより、私には見えないけれど、何が見えているの? 何が困っている?と幻視に対する本人の認識を聞き出してください。困っている点について一緒に対応を考える姿勢が重要です。繰り返す同じ幻視については、本人もそれが幻視であることを受け入れられる場合もあります。夜など暗い場合には明るくしてあげることで改善する場合もあります。

 


Q幻視の思い込みが激しいため、話をそらしたりできず、否定せずに聞いていると妄想がエスカレートしていってしまいます。。 本人の妄想は喋れば喋るほどひどくなり、思い込みが激しくなる 否定せずに対応するほうが良いと言われるが、その場合もひたすら聞いてあげるべきなのでしょうか。

A幻視も、妄想につながらない場合もあれば、激しい妄想につながる場合があります。あるいは、そういう時期があるといったほうがよいかもしれません。大事なことは、その特徴を知ることです。これは、認知症の妄想全般に言えることですが、若いころはそうした精神の障害がなかった方に生じる、初老期もしくは老年期の精神症状です。そして、限られた数の身近な人に向けられること、生活に接している、いわばその壁の向こうに向けられることが特徴です。その背景には、老年期特有の不安があるとされていますし、また、その人の生きている世界で起こる、幻視や、認知機能障害に起因する「生きにくさ」があります。幻視をあたまから否定しない方がよいのは、自分に今見えていることを周囲から否定されることで、被害的な思いにとらわれた対処行動につながりやすいからです。結果、家族や隣家からの「迫害」を感じて、ますます孤立化してしまうと、より症状が悪化します。介護にかかわる方は、いら立ちや叱責を抑え、アイコンタクト、スキンシップ、といった共感性の表現・メッセージ、ご本人の言葉を繰り返しながら、「〇〇が3人見えるんやね」と、同調することから始めることなど、認知症対応の基本的な方法を繰り返すことで、「自分が受け入れられている」と感じてもらうことが大切です。説得より安心(室伏君士)です。ただ、とりわけ初期や、妄想の激しいときには、ご家族には難しい面もありますので、一次的な入院も含め、常に専門家、経験者と相談しながら進めて行くことが必要だと思います。医療面では、地域の認知症専門医や物忘れ相談医、あるいは訪問看護、など。介護福祉面では地域包括支援センターや、症状の激しい時期は初期集中支援チームなどへの相談が可能です。

 


Q幻視を軽減させる方法はあるのでしょうか?明るい日中でも人がいると言うし、1階にいる時に見えていない2階の人を呼びに行ったりすることもあります。

 

Aこれも認知症全般に言えることですが、レビー小体病にも、疾病としての側面と、障害としての側面があります。上記にも書きましたが、障害としての幻視への対応は、その特徴(それには、病状の特徴もありますが、置かれている環境、その方の個性、などもあります)、つまりは個別性への配慮が重要です。一方で、単なる幻視ではなく、妄想につながるなどさまざまな行動症状が激しい方には、内服薬での調整も必要です。ただし、こうした症状は逆にお薬の影響を受けやすく、使用は必要最小限にとどめ、副作用に注意する一方で、睡眠導入剤や精神安定剤などを代表として、悪化させる可能性のある薬剤の常用、多剤併用を厳しく見直すことも重要です。


Q幻視状態の時のうまいかわし方や対応方法はありますか?同調すべきなのか?こちらが言ったことで覚えていることもあるので、いつかは心に残るかと思い言い続けているのですが。

・見えないものが見えると言われた時、否定せず「見えるんですね」と対応したことがありましたが、 本当にそれで良かったのでしょうか?

・父が幻覚から、母を叱ります。おそらく父が言った事を母が「違う」といった結果なのですが、幻覚にはつきあってあわせるのが正解ですか?

A頭から否定しないことが大事です。患者さんがどのようなものが見えているか、どのように感じているかを聞いてあげて頂きたいと思います。知らない人、小さな子供などを言われることが多いですが、何か困ったことをするのか、悪いことをするのか、危害をあたえるようなことをするのか聞いてください。多くの場合だまっている、何もしないと言われることが多く、その時には私には見えないけれど、悪さをしないなら気にせず放っておきましょうという対応でうまく行く場合もあります。それを繰り返すことで、患者さんも慣れてこられたり、覚えて頂けることもあります。これに対してトイレに人がいて夜は入れないとか、怖いものが見えるなどの訴えがある時には部屋を明るくする、幻覚を起こす原因になりやすい人形などを置かないようにする、部屋を整理するなどの環境調整を試みてください。お父様にも病気の症状だからわかって頂くようにお話ください。どうしても難しい場合には薬剤を処方することもありますが、副作用も出現しやすいため、注意が必要です。 

 


Q妻が何人もいるといわれた時、あるいは私(妻)を見て、あなたは誰?〇〇はどこに行った?と聞かれた時の対応はどうすればいいのでしょうか? (〇〇は私:妻)の名前)

・幻視症状の訴えがある人への会話や行動の方法を教えてほしいです。

Aよくみなさんから聞かれることではありますが「これが正しい」という方法はありません。

当事者が書かれた著書「誤作動する脳」では「消えて初めて幻視とわかる」と記しておられますが、その通りなのだと思います。

原則的には、共感的に聴くことです。そして安心感を持ってもらえるような対応を心がけること。「共感的に聴く」というのは、「ただあるがままに聴く」ということであって、「本当に見えるね」などと肯定することではありません。
それはご本人と対話する方との関係性よって大きく左右されます。信頼関係がしっかりできていれば、否定することで安心していただけることもあります。

「私には見えへんわ!安心していいよ」こう言って良いのは関係がしっかりできている時。

一般的には「そうなんや、見えるんや。私には見えへんけど、ちょっとそこまで行って一緒に確かめてみようか?」というような感じでしょうか。
人物誤認に対して
これも基本は同じです。共感的に聴くこと、安心感を持ってもらえるように心がけることですが、「あんたは自分の配偶者ではない」と言われたら対応に困ってしまいますよね。
「ええ!私やねんけど」とちょっと冷静に応対しながら、一旦他の部屋へ行くなど離れてちょっと間を置いて、「ただいま」とか言って知らん顔でもう一度話をする。
あとは、その場その場で工夫して、うまく行った方法があれば次もそれを試してみる、という試行錯誤の繰り返しが必要になると思います。


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